secunda

健全

「あなたは明日死んでも良いと思っているように見えますね」と言われたので、私は寸分の迷いなく「はい、死にます」と応えた

まゆさんのツイートをふぁぼった瞬間、斜め後ろから

「アカウント名覚えましたよ」

という声がしたので、私の思考回路はすぐさま、

(この男をどうやったら完璧に殺せるだろう)という方針に切り替わった。

イッタラーなのバレるくらいなら殺す。

 

今日は好きだった人と飲みにいった。

駅で会った瞬間、「こんな人だったっけ」と焦った

なんだか全然知らない、地味で女っぽい青年が立っていたから。

帰るのは悪いから私は彼のうしろについて、まあどんな店でもどうでもいいや、

というなげやりな気持ちでいた。

少し下品なお店に入って、カウンター席にすわって

ごはんを一口つついて、そのあとはひたすら甘いお酒をのんでいた。

彼はビールと日本酒をのんだ

いろんな話をした

不思議と緊張しなかった、きっともう、なんにも意識していなかったとおもう

高校時代のこと、家族のこと、好きな本の話、ゲームのこと、

私のことを軽薄だと思っていた彼は、

私が純文学が好きだということをしって

浅はかに感動していた

 

「あなたの好感度がうなぎのぼりですよ。今まであなたの一面しか知らなかったから」

あっそ。

だから、何?

 

 

 

(私って何。……私でさえ知らないのに……)

 

 

 

昨晩脱毛クリームで陰毛がハゲた。

絶対裸はみられたくないとおもって、だから、

その男には指一本触らせなかった。

きっとしなだれかかったら、彼もゆるしてくれるだろうと

すこし

思ったけれど

そんな気分にはなれなかった。

この男ってこんな顔だったかしら、と何度も何度も記憶をさぐってみたけれど

とうてい思い出せやしないのだ

一目惚れの恋なんてどうせこんな結末にきまっている

「理想を愛するようになる」

 

生活の楽しみであった恋が失われ

もう勤労意欲もなくなって

それで

……

 

 

わかれ際、

 

 

「あたし、酔っちゃいました。きっと線路に落ちちゃいます」

「あなたは明日死んでも良いと思っているように見えますね」

 

 

この男は案外鋭かった

 

「はい、死にます」

生きていたらまたいずれ、と付け加えて、

私は振り向きもせず改札を通り過ぎた

あの男はきっとこれからも、どうでもいい女との付き合いを続けて

いずれ結婚して

平凡な中年男になるのだろう

私と関係のないところで

 

Twitterではお騒がせしました。

夜美は不滅です。